念願の劔岳北方稜線と裏劔の紅葉

<山行報告>
念願の劔岳北方稜線と裏劔の紅葉
【報 告 者】キーボウ
【日   時】2017年10月4日(水)~7日(土)
【参 加 者】りりぃ、キーボウ

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【仙人池から八ツ峰を望む】

≪コースタイム≫
10月4日;立山駅~美女平~室堂(9:00)~雷鳥沢(10:00)~剣御前小屋
       (11:30/12:00)~剣山荘(13:00)
10月5日;剣山荘(5:20)~前剣~劔岳(8:30)~池ノ谷乗越(10:50)~三の窓(11:40)~小窓ノ王の肩(12:30)~小窓(15:00)~池の平小屋(16:45)
10月6日;池平小屋(6:30)~仙人池ヒュッテ(7:40/8:20)~仙人湯小屋(10:30)~雲切新道(11:15)~仙人ダム(14:15)~阿曽原温泉小屋(    )
10月7日;阿曽原温泉小屋(7:00)~(欅平まで11.6km)~オリオ谷(9:20)~大太鼓(10:30)~志合谷(11:10)~(4.8km)~欅平(14:00)


≪ 報 告 ≫
  今回の目的は、「北方稜線」という魅力的な言葉に惹かれて劔岳山頂から北の稜線を辿ることと、仙人池から裏劔の紅葉を眺めること、そして、黒部川に沿う歴史に残る回廊「下の廊下」を辿るこという欲深いものだ。
 早朝の立山駅の無料駐車場に車を泊めて、ケーブルカーに乗り込んだ。美女平で高原バスに乗り継いで室堂到着。いよいよ、長い長い山旅の始まりだ。

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【好天の中、スタート】

 荷物は12~13kgか。3泊とも山小屋だが二日目の池の平小屋は食事無し。この時期だが、平日なので宿泊者は多くないと思い、遅くに予約したのが裏目に出た。小屋終いまで数日なので食材は予約した分しか荷揚げしていないとのこと。このため、鍋(しかもキャンプ用のステンレス)を担ぎ上げたので結構重くなってしまった。
 まずは、今宵の宿である剣山荘を目指した。一旦、雷鳥沢に下る。ここから劔御前小屋への登りは何度登ってもつらい(遠い昔の分も含め5度目)。幸い今日・明日は晴天の予報、ゆっくりと登りあがることに。劔沢と室堂間ではヘリコプターによる物資移送が繰り返し行われていた。午後の早い時間に剣山荘に到着。ここはシャワーもあり快適だ。宿泊者は30人くらいか。各部屋の4隅にグループが割り当てられた。
翌、二日目も良い天気。早めにスタートしたつもりだがなかなかピッチが上がらない。多くの人に追い越されて結構いっぱいいっぱいで劔岳山頂へ。
 さて、これからが今回のバリエーションのスタートだ。「この先キケン。一般登山者は入らないでください」の看板を確認して先へ進む。この先、案内の目印は少しはあるようだがほとんど確認できない。

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【山頂で劔を差し上げる】

 10年以上前、チンネを登った後、池ノ谷乗越からの逆ルートをとったが特に難しく感じられなかった。劔本峰からのコースはルートファインディング力が試されるところだ。基本、稜線より長次郎雪渓側を進むと歩きやすい。特に、下りはクライムダウンをしっかりしないといけない。ところどころに、古いハーケンが残っておりルートに間違いないことを確認する。右下に熊の岩のテン場を見ながら、トラバースを続ける。モアイ像と呼ばれる岩が見えてきた。ここを過ぎると長次郎の頭は近い。長次郎の頭と思われるピークにはピッケルが刺さっていた。八ツ峰のギザギザの岩峰がかっこ良い。遠くには鹿島槍南峰から布引への優美なラインが見渡せる。この先は、池ノ谷乗越に向かってクライムダウン。続いて、難関の池ノ谷ガリーの下降だ。がれがれの岩場を時々岩を崩しながら結構な時間をかけて三の窓の少し西側の鞍部に到着。

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【クライムダウンは結構厳しい】

 チンネの見学はパスして「発射台」と呼ばれる小窓の王南壁の西側の急な斜面を登る。すぐ上に、マルチピッチのルートだろうスリングがたくさんついたボルトが見える。ここは人口登攀のピッチのようだ。発射台は見かけよりも易しく、小窓の王の肩に到着。ここから小窓までのバリエーションが厳しかった。
 ネットで調べた事前資料によると「尾根からのトラバースルートへの取付(下降地点)を見落とし稜線通し(ルート不明瞭)に歩いてしまう。山腹下降後(100mくらい)トラバース開始地点(左に折れる)を見落とし下降しすぎて行き詰る。」を読み違えてしまい、「山腹」ではなく、すぐにルンゼを下降し、トラバース開始地点を探した。どうぜはっきりとした目印は無いものと思い込み、ブッシュのある適当な所からトラバース開始。

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しかし、明らかに悪い。しばらくトラバースした後、上へ上へと登りあがるとかすかな踏み跡があり、ここからその踏み跡に従う。しかし、すぐになくなり、厳しいハイ松帯の下降に移る。しばらく、踏み跡や赤テープがあったりするが、どちらにしても厳しい。

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【小窓雪渓】

 9月初めくらいまでは雪渓が残ると思われる急ながれ場のトラバースを過ぎ、更に下降を続けてようやく小窓に降り立った。これから、小窓雪渓(氷河と認定されたようだ)を標高にして250m下る。傾斜はそれほど急ではないので僕は登山靴のまま、りりぃは軽アイゼンをつけて下った。難しい難しいと書かれていたが、トラバース開始地点は簡単に見つかった。情報通り、雪渓の右手に顕著な滝を見ると、トラバース開始地点にはくっきりとした〇がつけられていた。この旧鉱山道に登りあがれば後は池の平小屋までは近い。17時前に池の平小屋に到着。12時間近い長い長い行動が終わった。小屋には風呂があり、すぐに入ることが出来た。この日の宿泊者は7人だ。カメラ好きの夫を持つ夫婦と、明日は僕らと同じ行動になる大阪からの夫婦と、単独行者だった。

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【池の平小屋前にて3日目のスタート】

 3日目も天気はそこそこ、但し午後から崩れる予定。まずは、仙人池からの裏劔の絶景を見ようと、 仙人ヒュッテに向かう。ここで、僕に異変の前兆が・・・途中、なんでもない所で転倒してしまった。幸い、ザックがクッションになり大事には至らなかった。
 やがて、仙人池ヒュッテに到着。仙人池からの眺めはネットで調べてはいたが、実際は迫力大である(この感動にはうまい言葉が見つからない)。風も無いので、八ツ峰のギザギザをしっかりと仙人池に映しだしている。撮影ポイントを教えてもらって記念写真と共にしっかりと目に焼き付けた。6年前の夏にはこのVI峰の頂に立っていたことが懐かしく思い出される。

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【仙人温泉の源泉】

 しばし休憩の後、長い長い下降に向かう。周辺は黄色を中心とした紅葉がまぶしい。このルートはまだ残る雪渓のトラバース等結構バリエーション気味だ。この後、ちょっと傾斜したスラブ場の岩場で滑って転倒してしまった。設置してあった針金に手を掛けて転落はまぬかれたが顔面にひどい傷を負ってしまった。
まあ、顔だけでその他のパーツに問題は無いので、りりぃに簡単に手当てをしてもらってすぐに下山を続けた。今年はすでに閉鎖してしまった仙人温泉小屋を通って、登山道の上の方でガスを噴き出す岩場の間を抜け、雲切新道を下った。紅葉に染まる雲切新道を下り終えると仙人ダムに到着。ここから、下の廊下コースと合流になる。
 昨年はここまで到達できなかったことが悔やまれる。十字峡前後、全行程の1/3を残したことになる。関電の宿舎の下を通って、水平歩道までの上り、そして阿曽原温泉小屋までの下りと、たかが100mくらいのアップダウンなのだが、ばてた体には本当に辛い。
 ほとんど雨に降られることなく、阿曽原温泉小屋に到着。今夜の宿泊者は50人だそうで何とか1人布団1枚が確保された。夕食前に露天風呂に入ることに。すでに、雨が降り出しており露天風呂までの60mくらいの下りはサンダルでは厳しい。でも、温泉は最高。

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【阿曽原温泉】

 食事の後は山岳救助隊の若いお兄さんの話や、オーナーの佐々木氏の解説付きで水平歩道の補修や小屋の建設などのビデオの視聴があり、厳しい黒部の状況が理解できた。

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【雪崩の多い沢はトンネルに】

 さあ4日目、雨具を着てのスタートだ。いきなり水平歩道(旧日電歩道)までの急登から始まる。120~130m登りあがると、950m~1000mの標高で水平となる。ここから先が水平歩道の神髄だ。オリオ谷の堰堤の下のトンネルを抜けるときれいにえぐり取られた「大太鼓」そして、志合谷の水浸しの長いトンネルを抜けると、対岸右手に奥鐘山(「日本の岩場」によると、高差400m、幅500mに及ぶ、我が国最大の岩場)を望む。
ここには、20本くらいのマルチのルートがあるが最近は登る人が少ないのかも。大岩壁を眺めながら鉄塔下を抜けると欅平駅への下りとなり、長い長い裏劔の旅も終わりを迎えることとなった。

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【大太鼓】

僕の負傷というアクシデントもあったが、二人にとって大満足の山旅となった。
室堂からの距離は28km弱だった。href=”http://asobow.sakura.ne.jp/sblo_files/asobow/image/image021-ff34a.jpg” target=”_blank”>image021.jpg

【宇奈月温泉に向かう】
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【今回歩いたルート(赤線)】