<山行報告>
大崩山,傾山,祖母山ファストパッキング
【報 告 者】toku
【日 時】2015年09月19日(土) ~ 2015年09月20日(日)
【参 加 者】toku
【装 備】
○長袖シャツ 、Tシャツ、ズボン、靴下、グローブ、防寒着(ダウン)、 雨具、日よけ帽子、靴、予備靴ひも、ザック、食事4食分、行動食2食分、非常食2食分、ハイドレーション、ガスカートリッジ110g、コンロ、コッヘル、食器、ライター、地図(地形図)、コンパス、笛、計画書、ヘッドランプ、ハンドライト、予備電池、GPS、ファーストエイドキット、常備薬、ロールペーパー、保険証、携帯、時計、タオル、ツェルト、ストック、ナイフ、カメラ、テントマット、シェラフカバー(シュラフは無し)、水を除いて9kg
○水はスタート時点で4リットル、給水は鹿納山手前,杉が越,九折越でそれぞれ2.5リットル
ブナ広場で1.5リットル、合計13リットル
【天 気】快晴 延岡市19日の日の出5:58 日の入18:16
延岡市の最高最低気温19日最高28.4℃最低15.9℃ 20日最高27.4℃最低15.2℃
【行 程】
1日目
大崩山登山口、大崩山荘、湧塚分岐点、上和久塚、大崩山、鹿納山(鹿納坊主)、鹿納の野、お姫山、五葉岳、夏木山、桧山、新百姓山、杉ヶ越、宿泊地
2日目
宿泊地(杉ヶ越近く)、傾山、九折越、笠松山、本谷山、尾平越、古祖母山、障子岳、祖母山、国観峠、緩木山、登山口(緩木神社)、(タクシー)、JR豊後荻駅
コース概要
出発時刻/高度: 05:01 / 620m 到着時刻/高度: 20:25 / 510m
合計時間: 36時間42分 合計距離: 61.23km
最高点の標高: 1718m 最低点の標高: 488m
累積標高(上り): 4220m 累積標高(下り): 4319m
1日目 山行 14時間33分 休憩 1時間59分 合計 16時間32分
2日目 山行 12時間19分 休憩 1時間58分 合計 14時間17分
≪ 報告 ≫
プロローグ
2011年に祖母傾一周をした後に,大崩山も含めた大縦走があることを知り,いつかはチャレンジしたいと思っていた。
8月の北アルプス遠征が中止になり、シルバーウィークに北アルプス遠征のリベンジもと考えたが、これからも遠征続きなので、九州の山で縦走しようと考え、以前からやってみたいと思っていた祖母傾大崩の縦走を計画した。夜間移動では危険な個所もあるので行動は明るい時間帯に行動することとして,1泊2日,予備日を1日にして計画を立てた。
ワンウェイなので車では行けない。交通手段を調べたが祖母山側からはスケジュール的に無理がある、大崩山側からだと、美人の湯に1泊すれば早朝スタートできそうだ。
しかし、休日は美人の湯までのバスが運行していない。タクシーだと6000円くらいかかる。(T-T)
延岡駅から走っていこうと考えていたが距離は27km緩やかな登りが続くコース、荷物もあるし5時間はかかる。
こんなことを考えていたら大崩山を庭のように走り回っているKくんから連絡があり、1日目だけ、一緒にいってくれるとのことだった。
通過時刻概要
1泊2日の計画で、宿泊を前提にコースタイムを考えた。所要時間は山と高原地図のコースタイムに0.7をかけて算出した。休憩時間を含めて0.7で行くのはかなりきついかと思ったが、予備食料を1日分持って行くので、タイムオーバーの場合は、もう1泊するつもりでいた。予定時刻がその時間である。右側のGPSで記録した時間が実際の通過タイムである。同行者のおかげで登山口まで自動車で行くことができ、スタート時刻を1時間早くすることができた。
1日目 大崩山登山口、大崩山、鹿納山、お姫山、五葉岳、夏木山、桧山、新百姓山、杉ヶ越、宿泊地(杉が越過ぎ)
18日の夜に高速のSA で待ち合わせして、一気に大崩山登山口に着いた。1時間ほど仮眠して、5:00登山口を出発した。
上祝子の水位は18日24時で71cm、1時間に1cmくらい減っている。
大崩山はワク塚経由で登る予定だが、渡渉が大丈夫だろうか、ダメな場合はモチダ谷経由かな?と思いつつ分岐に来た。
美しいモルゲンロートに光る小積ダキに感動しながら渡渉点を探したら飛び石伝いに簡単に渡ることができた。
ハシゴや急登を喘ぎながら登ると袖ダキ展望所に着いた。
袖ダキから小積ダキやワク塚を見るといつも圧倒される。しばし写真を取りながらカロリー補給をした。
下ワク塚、中ワク塚をパスして上ワク塚に登る。大崩山では七日廻り岩は上ワク塚に登らないと全容を見ることができない。遠くには海も見えた。景色を10分ほど楽しんで先を急ぐ、展望は期待できないものの大崩山山頂を目指す。縦走路分岐に荷物をデポして山頂まで往復した。
縦走路を鹿納山へ向かう。宇土内登山口の分岐を間違えないように行けばあとは一本道でトレイルもしっかりしている。縦走路の途中には幹がゴツゴツとした変わった木が有ったので抱き付いてみたらゴツゴツのでっぱりがちょうど大事なところにあったのでしばしうずくまってしまった。
そこからしばらく行けば鹿納坊主も大きく見えてきた。
鹿納山手前の権七小屋谷への分岐で急傾斜を下って水を補給(20分休憩)し鹿納山へ向かう。最近の降雨によって谷の上部まで湧水があり、すぐに給水できた。下の地図で縦走路から外れたところが水場だ。
鹿納山に登り、お姫山で昼食(30分休憩)をとった。快適なトレイルを走ったり歩いたりしながら進む。
葉岳からの眺めは素晴らしく、しばし写真撮影タイム、これから向かう傾山・祖母山も近くに見える。遠くには九重の山脈もきれいに見えた。祖母山までの縦走路の尾根が脈々と続いており明日には祖母山の山頂に立っているのかと思うのが夢のような感じだった。他の登山者には、あまり会わなかったが五葉岳では福岡から来たという3人の登山グループが昼食を取っていた。
すばらしい景色に別れを告げて夏木山へ向かう。いよいよ同行者との旅も夏木山までとなる。同行者は夏木山から木山内岳の尾根に入り瀬戸口谷に降りてスタート地点の登山口に向かうということだった。夏木山に14時につかなければ日没に間に合わないということだったので少し足を速める。
予定通り14時前に夏木山に着き、ここまでの同行に感謝し別れを惜しみ記念撮影をする。奥に見えるのがこれから進む傾山だ。
夏木山から新百姓山までは難路の大鋸、小鋸がある。ここは梯子場があり、幅50cmほどの岩を乗り越えていくところもあり予想以上に時間がかかった。
またピークもいくつもあり、次こそは新百姓山かなと思ってもたどり着かず、ようやく新百姓かなと思ったら桧山だった。地形図には山名も書かれておらず計画段階では抜け落ちていたのでがっかりしたが、桧山からはすぐに新百姓山に着いた。夏木山では30分の余裕があったが新百姓山までに貯金がなくなった。
地図の夏木山から新百姓山までのコースタイムが3時間であったので0.7掛けて2時間程度で行けると思ったが、新百姓山の山頂に示してあった道案内では夏木山まで4時間のコースタイムが示してあった。道理で時間がかかるはずである。さらに新百姓山から杉ヶ越までの計画段階のコースタイムは1時間で、その0.7だから40分ほどの時間で計画していたが現地の道案内の表示では新百姓山から杉ヶ越までは1時間40分と表示されていた。日没の時間も迫っているので、早々に杉ヶ越へ向かうことにした。
鹿納山前で補給した水もほぼ無くなりかけており、杉ヶ越で水の補給をしなければ先に進めないので明るい内に水場にたどり着きたかった。事前に確認したところでは大分県側にトンネルを抜けて600mほど行ったところに水場がある。また、山と高原地図にも杉ヶ越近くに水場のマークがあった。ただし、この水場は無いという情報もあったのであまり期待はできない。杉ヶ越から登山道で宮崎県側の県道に降りるとトンネルを通って大分県側に行き、さらにそこから600mなので往復1時間以上かかりそうだ。大分県側のトンネル近くに砂防ダムがあるのも事前に確認していたので最近の雨の状況から砂防ダムまで谷を降りていけば水が補給できるのではないかと考えた。
一応、地図上の水場マークも確認しつつ県道に一番近いところから谷を下ることにした。傾斜はきついが下れないことはない。山と高原地図にあった水場は下の地図の青丸のところである。ちなみに事前に確認した沢は、同じく下の地図の「沢」の文字のところである。杉ヶ越登山口からは1kmほどありそうである。最悪の場合は谷を県道まで下りて沢へ行けば500mほどでつきそうである。そう思いながら谷を降りて行ったが水場マークのところには踏み跡も何もないので、水場もないだろうと判断して県道へ降りて行った。ちょうど降りた所に砂防ダムがあり、砂防ダムの下に降りることができれば水がありそうだ。砂防ダムに溜まった石のガレ場を下っていくと砂防ダム横に行くことができ下にも降りることができた。幸いにも最近の降雨のおかげかチョロチョロと水が流れていた。2.5リットルのプラティパスを満たして来た道を縦走路まで戻った。往復でも20分もかからずに助かった。
縦走路に戻ると日暮れ寸前で、ずいぶんと暗くなってきた。ヘッドライトを出して縦走路を行くとすぐに杉ヶ越の神社に着いた。当初はここでビバーク予定だったが水の補給もできたことから今日のうちに進めるだけ進んでおきたいと思い傾山の方へ歩いた。日が暮れてもトレイルの踏み跡はしっかりしており尾根上なので道を間違う心配は少ない。梯子場に入る前で、できるだけ平らなところを探しながら進む。19時までには泊地を定めようと決めて地図を見ながら平らな場所の検討を付けて、1088ピークの少し先にツェルトを張った。お湯を沸かし、夕ご飯を食べて、少しだけ焼酎を飲んで寝た。気温は15℃以上ありそうでマットを敷いてシュラフカバーを掛けるだけで暖かく寝られた。しかし、わずかな傾斜があり寝ている間にツェルトの足元の方にずれていて、ツェルトが体に密着しており外気の冷たさが直接伝わってきたので寝ている間に目が覚めてしまった。震えが来たのでダウンを着てシュラフカバーの中に入ってしばらくは身体を擦り続けていた。ようやく暖まってきたので後はぐっすりと寝ることができた。
2日目 宿泊地(杉ヶ越過ぎ)、傾山、九折越、笠松山、本谷山、尾平越、古祖母山、障子岳、祖母山、国観峠、緩木山、登山口(緩木神社)、(タクシー)、JR豊後荻駅
2日目は5時にスタート予定であったが、起きたのが5時だった。朝食を取ってスタートは6時、1日目と違いスタートから1時間の借金だ。今日も天気が良く朝日で周りが赤く染まった。
杉ヶ越から傾山までのルートは難路とは聞いていたが岩場や梯子場を何度も上り下りし、山頂が近づいて来れば傾斜がきつくなり、たびたび立ち止まっては休憩した。今回の縦走路の中で一番きつい区間だった。
前日に杉ヶ越から1時間ほど進んでいたにもかかわらず傾山までの所要時間は2時間以上もかかった。わずかに時間は短縮したものの疲労度も最大になった。傾山山頂で朝食の残りとコーヒーを飲んでしばらくゆっくりした。
前日に続き、景色も最高で振り返ってみれば、ピークがわかりにくいが大崩山もはるか遠くに見えた。
北の方には九重山がはっきりと見え、手前には三つ坊主と上畑からの登山道が見て取れる。方向を変えると、これから向かう祖母山も昨日よりずっと近くに見える。祖母山の向こうには噴煙を上げる阿蘇山も見えた。
九重山と三つ坊主
祖母山と阿蘇山
しばらく休憩すると疲労も回復してきた。祖母山で待ってくれている仲間もいるので、祖母山までは、できるだけ今日中に着きたいと思った。九折越まではとても快適に走ることができる。途中、いくつかの登山グループに会ったが、その中の一つに昨日五葉岳で会った3人組がいた。思いがけず応援してもらった。
九折越では昨日からの給水と晩御飯・朝食で消費した水を補給するために見立の水場まで500mほどの距離を往復した。
傾山からは何度も経験しているルートなので迷いもなく先を急いだ。笠松山では東側の展望所にもよらずピークのみを踏んで、本谷山も写真だけ撮って進んだ。
ブナ広場では、いつもの水場でここまで消費した分の水を補給し、お湯を沸かしてラーメンを食べた。30分ほど休憩して最後の難所である古祖母山への登りを急いだ。ここまでで予定より2時間も遅れている。下山時刻は確実に暗くなっている時間帯だ。それよりも最終列車に乗れるかどうかも心配になってきた。最悪の場合でももう1泊する準備はできているので気は楽だった。
毎度の古祖母山までの登りは慣れてきたのかそれほどきつさは感じなかった。障子岳ではリンドウがたくさん咲いていた。障子岳から祖母山までは快適なトレイルを走ることができる。今までの遅れを少しでも減らそうと天狗岩もスルーして頑張った。
祖母山頂には予定より1:20遅れで到着することができた。振り返ると今まで通ってきた縦走路が一望できる。山頂ではラン仲間が待っていてくれて応援してくれた。もうすこしゆっくり話したかったが時間が押しているので先を急いだ。水も1リットル以上あったので九合目小屋では水の補給をしなかった。
国観峠を通り三県境から先は未踏ルートなので、できるだけ明るい内に通過したいと思っていた。緩木山―越敷岳は九州百名山でもあるし、その周回ルートははっきりしていると思い、明るい内にとにかくその分岐までは行きたいと思っていた。しかし、1140m地点の緩木山の分岐まではカヤが生い茂りルート不明瞭の区間があり進むのに難儀した。まだ明るいからどうにか進むことができたが、ここで日が暮れたらビバークだなと思いつつ進んだ。
そうこうするうちに緩木山の分岐へ日没前に到着することができた。
これからも未踏ルートだが九州百名山の山でもあるし踏み跡はしっかりしているだろうと安心していた。緩木山に着くころにはすっかりと日が暮れ辺りは真っ暗になった。
山頂は下山ルートから少し外れており、しかも広く平坦な場所だった。コンパスとGPSが無ければ完全に下山口を見失うような感じだ。山と高原地図では登山口駐車場まで40分のコースタイムだったが、がれた石がゴロゴロしており思うように速度を上げられない。予定では最終2本前くらいの列車で帰られるつもりであったが最終列車の時間も心配になってきた。
ようやく緩木神社に着いたのが19:50で最終まで1時間ちょっと、駅までは10kmほどだ。荷物も疲労も無ければ走っても余裕で間に合う時間だが、荷物があって疲労もあって、コースのアップダウンもありそうで、もし道に1回でも迷ったらタイムアウトということで、タクシーを呼んだ。神社横の公民館では神楽の練習があっておりタクシーが来るまでしばらく楽しむことができた。
タクシーは30分ほどできてくれたが最終列車まで残り30分ほどしかない。列車に乗る前にビールやつまみも買いたかったがギリギリだ。豊後荻駅に近くなると商店街があり、運よく酒屋さんが開いていた。タクシーをここで下してもらい、ビールを買って店を出たら駅まで送ってくれるということだった。メーターも倒してくれていて優しいおじさんだった。駅についてホッとして入ろうとしたが入り口にカギがかかっていた。最終列車があるのに駅には誰もいない。
タクシーの運転手さんも入り口を一緒に探してくれた。なんと駅舎を左の方にぐるっと回った端の方に時間外の入り口があった。タクシーの運転手さんにお礼を言って列車を待つことにした。駅は清掃されていてベンチも水で濡れていた。座りたかったが列車が来るまで立ったまま待たなければならなかった。
ようやく列車が来て、のんびりとビールを飲み、長かった縦走の記憶をたどりながら熊本への列車の旅を楽しんだ。