【報告者】りりぃ、キーボウ、フジミ
【日 程】2010年11月13日(土)
【天 気】曇り
【参加者】キーボウ、フジミ、りりぃ
【山行名】虎ヶ峰・鷲ヶ峰登攀
【行 程】仙酔峡駐車場9:40~関門10:30~第1キレット11:50~虎ヶ峰12:00~第1キレット12:30~ジャンダルム12:50~赤壁~北稜~鷲ヶ峰15:00~ノーマルルートⅡ~仙酔峡駐車場17:30
コスモスやススキが秋風に揺れ始めると阿蘇山に行きたくなる。
「阿蘇山」という名の山は実際には存在しないが、県外の人から見れば高岳も中岳も根子岳も全部ひっくるめた阿蘇五岳を「阿蘇山」というらしい。
私は火の国の女。情熱は静かな炎としていつも胸に秘めている。
ハイクでは流行りの山ガールなどといういでたちで浮かれ楽しんでいるが、いざヘルメットを被る登攀となればまなざしもきりりと真剣そのもの。おしゃべりだってしやしない。というより、おしゃべりをする精神的余裕をあの極端にガレたルートは奪ってしまうのだ。
今回は、去年行った鷲ヶ峰と第1キレットを挟んで反対側にある虎ヶ峰にキーボウさんに同行してくださるよう夏の終わりにお願いしておいた。
フジミさんも直前になって参加表明してくださった。
土曜日のせいか待ち合わせた仙酔峡駐車場には高岳東峰・中岳に登る人ばかりのようで鷲ヶ峰は私たち3人の貸し切りだ。
天気はいまいちの曇天。しかし風が凪いでいるので、暑くも寒くもないまさにクライミングには絶好の日和。
少し遅めの9:40に仙酔峡駐車場を出発。
関門のレリーフ前で小休止。
【期待と緊張が高まる場所】
前回ガリー2に入るルートを見つけ切れずに先に行きすぎてしまったので左側を注意しながらリードのキーボウさんは行かれたようだが、今回もやっぱり行きすぎてしまった。他の人よりちょっぴり多く楽しめることとなったが、垂直に思える壁を見ればクライミング要素が大と判断し、登山靴の私は安全のため早くもクライミングシューズに履き替える。
【アプローチの方が怖い…】
ガリー2は以前よりガレ度がアップしているのではないかと思われ、どこに足をおいても石が崩れそうで本当に精神衛生上よろしくない。
ガレ場は私が一番苦手な場所だ。
【落石警報多発のガレぼろガリー2】
第一キレットでは最初に着いたキーボウさんが虎ヶ峰の壁を見つめ思案顔。登攀ルートを捜していたようだが、周りを良く見てみると少し下から虎ヶ峰方向へ踏み跡がついている。
虎ヶ峰へは、ロープなしで行けそうなのでザックはデポ。踏み跡をたどる。
頂上からはいつもと違った角度の根子岳がすぐ間近に見えて新鮮だ。
【虎ヶ峰の頂上にて根子岳をバックに】
残念ながら虎ヶ峰の頂上碑は折れてしまっていたが、阪神タイガースの虎のシールが貼ってあったのがユーモラスで緊張がほぐれる。
ジャンダルムへは念のためキーボウさんがロープを出してくれた。
天窓でフジミさんをパチリ♪
赤壁を登り、いよいよ北稜ルートだ。
ここは、リードのキーボウさんによる報告となる。
赤壁を登るといよいよ北稜への登攀が始まる。壁面はいままでのぼろぼろさに比べ意外としっかりしている(ように感じるだけかも)。
リードの場合、ホールドが抜けて落ちた場合厄介なことになるので、力をかける前に、引いたり横に押したりしながら慎重にホールドを選ぶ。出だしは垂直に近いのでやはり緊張する。1ピン目を見つければ少し安心。これから先は少し思い切ったムーブも出来る。カンテ(稜)よりも少し右側を右上。しっかりとした並行ピンの支点でビレイ。
【1ピッチ目と2ピッチ目のビレイ地点】
2ピッチ目は出来るだけ右に行かないようにと思ったが、今回も右にずれてしまった。5mくらい左にトラバース気味に戻って、カンテに出る。ここで、きっちりとした支点が見つからなかったので、古いハーケンでランニングを取ってしまった。マルチの場合は次のルートが読めないというか登って行きながら探さねばならないので、どちらに進むべきかこの時点ではわからない。ここからもっと左上するのが正解だったのでロープの流れが急に悪くなった。この古い支点を飛ばすか、長いスリングをかませるかすべきだった。次のランニングを取ると更にロープが重くなった。限界に近いところまで重くなってやっと新しいぴかぴかの支点を発見。すぐ隣にも少し腐食しかかったピンを見つけた。ここで、2ピッチ目を切る。狭いビレイポイントに三人集まると苦しい。
そこですぐに、3ピッチ目に移る。少し上に正規の2ピッチ目の終了点があるはずだが見つけられなかった。40mくらいで3ピッチ目を抜けてブッシュに入る。ここで、クライミングを終了とした。ルートが屈曲していて声も笛の音も通りにくい。ようやくフジミさんとりりぃを迎えて終了。
その後10mくらいブッシュを登ると鷲ヶ峰の頂上に到着。 【文:キーボウ】
【長いメインロープでセルフを取る会長】
鷲は、今回も私に大きな満足感と達成感を与えてくれた。でも、前回よりはるかに感激が薄いのはなぜ? 頂を踏むのは2度目だから? それとも腹ペコのせいなの?
すでに15時を少し回っていた。
【鷲ヶ峰にて】
竜尾根の方から何やらガスってきた。白い悪魔に包まれたら大変。風も出てきて急激に体感気温が下がる。昼食もそこそこに下山を開始。
このガスった中をナイフリッジを越えていくのかと不安だったが、そこはさすがキーボウさん。ちゃんと考えてくれていて、ノーマルルートⅡを行くという。ここはロープを使わないからノーマルなんだそうだが…(@_@;) それって、登りだけに言えることじゃないのかなぁ…。下降に使うとこの高度感は凄い。ガスのせいで遠くが白くうすぼんやりとしているのが救いなのかも知れないが、ワイルド&デンジャラス。
「今、私は生きているんだ (>д<;)」と強く実感。
峰々に虎とか鷲とか竜とか、獰猛な動物の名前がつけられているのにはやっぱりそれなりの訳があるのね。猫だって可愛いリボンを付けた猫なんかじゃないわ、たぶん山猫ね…(;一_一)。
ノーマルルートといえども急峻な岩場には真新しいピンが打ってあったので、それを支点とし懸垂下降する。更にガレ場がこれでもか!というくらい続いて喉がカラカラに乾く。
【アドベンチャー的要素満載のノーマルルートⅡ】
やっとガリー2に戻って来た。今度は関門からガリー2に入るルートを見定めるべく明瞭な踏み跡を忠実に辿る。関門に出ると、あららっ… レリーフから20mくらいしか離れていない所にケルンが積んでありしっかり赤テープが巻かれていた。見落としていたのだ。手品の種明かしと同じでわかってしまえばなんてことないけど。
良かった。これで、もう先に行き過ぎちゃうことはないわね(*^▽^*)
【ガリー2への入口】
虎ヶ峰&鷲ヶ峰と欲張った割には出発時間が遅かったため、仙酔峡駐車場に17:30着。
夕闇のなか阿蘇の家々の灯りが地上の星のように美しく輝いていた。(文:りりぃ)
『フジミの感想』
今回、はじめて鷲ヶ峰に登ることが出来ましたが、自分にとって記念すべき登山になりました。20代半ばから登山を始め、久重などは数え切れないほど行きました。そのうち夏はひとりで日本アルプスなどにも行くようになり、しかしそう度々遠出や厳しい新しい山行が出来るわけでもなく、刺激も減り何となく飽きてきた頃、3年前にクライミングを始めました。ジムから始め外岩に行きだし、あそ望に入り、シングルピッチのフリークライミングに夢中になりました。そしてマルチを3度経験し、今回、ついにバリエーションである鷲ヶ峰に行きました。
過去、幾多のクライマーの命を奪ったという鷲ヶ峰、これまで仙酔尾根を登りながら左手に見つつ、いつか登る日が来るのだろうかと憧れと畏怖を持ち続けていた頂でした。
鷲ヶ峰の取り付き通称「赤壁」から間近に見る鷲ヶ峰の三角錐は、思っていた以上に大きく感動的に迫ってきました。トップの会長に確保されながらクライミングに入ったとき、注意されていたのに不用意にホールドに力をかけたら、石がポロッと抜けバランスを崩しかけました。普段の登り込まれたスポーツクライミングのルートとの違いを強烈に感じさせられた一瞬でした。
頂上に立ったとき、りりぃさんは2度目で感激が薄かった・・・と書いていらっしゃいますが、(それはりりぃさんが経験を積まれ、初・中級者の域を脱し次のステージに上がられたからではないでしょうか?)初登頂の自分は大感激でした。地元熊本に、これほど登り甲斐のある山があるなんて、またまたモチベーションが高まりました。
鷲ヶ峰北稜ルートは、クライミングのときの「落ちそう・・・」という怖さでは1週間前に行った鉾岳ほどではなかったのですが、岩のもろさや落石に対する注意、また、アプローチも帰りもルートすらはっきりしないというワイルドさでは別次元の緊張感がありました。
山に登るという行為には、やはりグレードがあり自然度が高いほど、冒険的、挑戦的、命がけ的要素が大きいほど得るものは多く、満足度も高いのだと改めて感じさせられました。
行く前は怖かったし、迷いもあったけど、行って本当によかったです。連れて行ってくださった会長さん、りりぃさん、ありがとうございました。急にガスが湧き寒くなった山頂でいただいたしょうが湯はとってもおいしかったです。