北アルプス 屏風岩東壁 雲稜ルート

【報告者】 ゼルプス
【日 時】 2010年 8月6日(金)~8日(日)
【参加者】 キーボー、ますも、ゼルプス
【行 程】 平湯温泉側から上高地 横尾テントベース
【天 気】 全工程 晴れ
【山行名】 北アルプス遠征
8月7日(土) 
3:50 横尾テント場 スタート > 4:30 梓川 渡渉 > 5:30 T4取付着 > 5:50 T4取付発 > 8:00 T4着 > 8:15 登攀開始
11:00 3ピッチ目スタート > 15:20 6ピッチ目終了点 > 18:00 T4取付 > 19:00 梓川 渡渉点 > 19:20 横尾テント場
前日は昼過ぎに横尾テント場に到着し、夕方から小宴会となる。キーボーさんのお手製のカレー風ビーフンが登場する。P8060679.JPG
 午後7時半過ぎ床に就く。


当日は午前2時15分過ぎに起床し、朝食と準備。取り付きへ向かってスタート。
30分もしないうちに渡渉点に着き渉ろうとするが、キーボーさん、ますもさんはネオプレーンの靴下、私は登山靴下でこれほどつらい思いはしたことがないくらい冷たい、痛たかったーー。正気に戻るまで我慢の限界。
T4取付に到着すると1番手の人が登りかけていました。よく見ると単独のクライマーでした。ソロイストでの登攀です。すごかー。1ピッチから降りたところでキーボーさんからスタート合図となる。朝一番でありますが、なかなか難しい。なかなか気が抜けません。
T4に到着。
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ここから真剣勝負が始まります。初見の気合だー。緊張一発でリード開始。1ピッチ目後半の小ハングを超える所が核心と思われる。2回目でようやくパワー全開で乗越す。ますもさんもパワー全開で乗越す。キーボーさんは余裕?
2ピッチ目はピナクルを越えフェイスだが、出だしの登り始めに苦労する。やはり(Ⅴ+)ルートファインディングが面白い。扇岩テラスまで。ロープの流れがやや悪い。
3ピッチ目はあの人工です。左のフリーは登れません。腕が疲れていて最初はふにゃふにゃ状態。ほとんどリングボルトだが、リングの残っているのはほとんどない。古い細引きに鐙をかけて登らないといけません。慎重に慎重に。細引きが切れませんように。さすがに危険な細引きは新しい4mmの細引きをつけました。細い金属ワイヤーもありました。新しい細引きもありました。3ピッチの終了点から
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4ピッチ目はまたまたすごいです。人工出しですが最初のボルトがありません。2つ目のボルトに紐がつけてありそれに鐙を掛け、急いで2つ目のボルトにクリップし鐙を掛け、フリーでバンドに乗り怖いと言われているトラバースをして終了点に。
5ピッチ目から東壁ルンゼに入ります。ここも(Ⅴ+)です。なかなか味があります。フリーでいけます。支点少な目。厳しいムーブがありました。
6ピッチ目は明るく磨かれた白いスラブです。正面に常念岳が見えます。
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 終了点3人合流で15時20分でした。ここで登攀終了としました。ここから怖い怖い懸垂で降ります。4回でT4に降り立ちました。その後も懸垂を数回繰り返してT4取付。またまた渡渉で人生見ました。帰りは爽快と思っていましたが。
ヘッドランプはつけずに横尾テント場に帰還しました。
本日は黄色ロープアップの声が、青ロープアップの声はより多かったかな?の登りでした。
無事、快晴の天気の中怪我や墜落無く登攀山行ができました。
すごく味、中身のある名クラシックルートでした。
本日はリード、ロープワークで大変鍛われました。強くなりました。
サポート、フォロー、ビレイしてくれましたキーボーさん、ますもさん、ありがとうございます。
後に色々と反省点、サプライズなど出てきました。今後に生かしたいと思います。
【感想(キーボウ)】
岩小屋前での横尾谷の渡渉はいろんな方のレポートを読んでいて、「ネオプレンの沢用靴下」がベストではと思って準備しました。(ゼルプスさんにも伝えたつもりでしたが・・・)
これが、やはり正解でした。岩の上でも滑りにくく、冷たさも感じず渡ることができました。
壁全体の印象としては、今まで登ったどの壁よりも立っているように思いました。このため、腕の力が結構必要、うまく力を分散させないと長いピッチでは力尽きる可能性があります。
グレードは4級上ですが、九州では「小積ダキ中央稜」と同程度の本物のルートですね。
雲稜の1ピッチ目はホールドは豊富ですが、徐々に被り気味になるので、最初はパワーを押さえ目でないと核心部でばてます。
コーナーが終わる3mくらい手前の浮石は危険なので落としました。セカンドのますもさんが、今にも落ちそうと言われたので、すぐ下を登っていた僕はとりあえずますもさんに左側によけてもらい、僕がその地点に達したところで下部の安全を確認し落としました。石と石がぶつかりあい花火のような臭いをさせて落ちて行きました。すごいエネルギーだと感じました。
2ピッチ目は右へのトラバースが微妙でした。ゼルプスさんのうまいルートどりに感心。
3ピッチ目のA1ルートではフリーのラインを探ってみましたが、めちゃくちゃ難しそうでした。比叡山の「ハングの果てに見た夢は」の1ピッチ目の5.11bよりもはるかに難しそうに思えました。それ以降は、グレード通りの快適なピッチでした。
剣岳のチンネや北岳バットレス等と比較しても骨のある登り応えのある一本でした。
僕はセカンドなのでのんびりルートを観察しながら登りましたが、初見は大変難しいと思います。ゼルプスさんの奮闘に敬意を表します。
リードがセカンドとサードをビレイする場合、両者が同じスピードで登っていくとは限らないので大変難しいですね。「黄色UP」の声が多かったのも、セカンドが黄色、サードが青色でしたから、そうなったものと思います。僕は逆に引かれ気味でした。クライマーのペースに合わせたロープの引き上げは何度も練習して身に付けたいものです。
本ちゃんはスピードが命です。長く壁に留まれば留まるほど危険に遭遇する確率が増えます。今回は、普通のペースでしたがもっと早く行動する訓練も大事だと思いました。
今回は、天気もベストでパートナーにも恵まれ順番待ちもないベストの環境でしたね。ゼルプスさん、ますもさんお疲れさまでした。ありがとうございました。