【報告者】島地瓶
大崩山系縦走 2009年11月6~8日 単独
11月6日 熊本20:40~宇目経由美人の湯23:50
7日 大崩登山口7:04 わく塚渡渉点7:45 大崩山11:16 権七小屋谷のコル13:50
8日 権七小屋谷のコル6:35 五葉岳8:42 夏木山9:50 瀬戸口谷10:42 吐野11:50 大崩登山口13:22 美人の湯発14:03 延岡~南阿蘇経由熊本17;45
6日
休日と晴天がかみ合わないまま今年の紅葉の季節は過ぎた。しかし、珍しく連休をもらえたので、じっくり山での時間を味わおうと縦走を思い立った。うまくいけば青く澄んだ空に映える大崩の岩峰群が望めるはずだ。会社の帰りに車検に出していた車を受け取り、自宅でパッキング。ガソリン、灯油、食料、山で読むための本を調達、夕食も近所で済ませ車を飛ばす。メンテのためかずいぶん回転が軽くなったような気がする。宇目からの山越えの道では鹿を10頭ほど見た。美人の湯駐車場には前泊の車が5台ほど。隣の変態カップルのたてる音声が夜の静寂を汚していた。
小積ダキ
7日晴れ
6時半くらいになって明るくなってきたので登山口に移動。すでに10台ほどが路肩に停めてあった。大崩山荘の前を通り、渡渉点で小積ダキを見上げる。すっきりとした青空と白い岩肌のコントラストがまぶしい。昨年登ったラインが見えないか目を凝らすが上部のピッチくらいしかわからない。まるで垂直の巨大迷路だ。わく塚コースを登り始めてしばらくで下ってきた登山者に出会う。「道が落ち葉で覆われ、テープも少ないので諦めて下山している」と話していた。しかし、進んでもとくにそういった印象はなかった。多分小積谷の方に入ってしまったのだろう。
他の登山者
谷から急な尾根に上がり、袖ダキ、中わく塚、上わく塚へ。大崩の代表的景観に満足しながら行動食を食べる。縦走路に目を移すと鹿納山のピークが際立つ。樹林帯の中に飛び出ている七日回りの岩も異様だ。ほかの登山者に追いついたり、休憩している間に追い抜かれたりして相前後しながら進む。一つ一つの岩峰に登ったのもあり、時間は食った。リンドウが丘やモチダ谷の分岐を過ぎ、笹薮の中を歩けば大崩の山頂。15分ほど休憩。展望のある石塚で休む人のほうが多かった。
快適な縦走路
縦走路は上鹿川コース分岐から入る。両側に笹が茂る道を下っていくと道標があった。尾根道は想像していたよりも薮は少なく歩きやすい。こんなことならもっと早く来ればよかった。木々もすっかり葉を落とし明るいトレールを快適に歩く。鹿納山に近づくと、アップダウンが出てきて、その上、濃い笹薮も出てきた。オーバーペース気味になり、暑さで疲労を感じ始めた矢先、見覚えのある権七小屋谷のコルに到着。草地にテントを張り、しばらくくつろいだ後、水汲みに行った。水場は権七小屋谷側に少し下ったところにあり、チョロチョロと岩の割れ目からしみだしている程度だった。前に来たときよりもずいぶん少ないが、ハイドレーションのチューブを利用して、1分につき1㍑、約5㍑確保できた。
穏やかな日差しの中、読書をしたりして山での時間を過ごした。夕食は白米を炊き、混ぜご飯の具を入れたのとマルキン食品の呉汁のもとにインスタント味噌汁を加えた呉汁。豆腐も買っていたが車に忘れてきたのが悔やまれた。
権七テント場
8日晴れ
5時半くらいに目が覚めた。テント内の気温は7度。月がまぶしく見えるほどの晴天だ。テント内で湯を沸かし、出前一丁を半分に割って投入。汁を前日のご飯にも分けて火にかけ、おじやにして食べる。満腹で体も温まった。明るくなってから出発することにしていたので、コーヒーをすするなどして適当に時間を調整。ヘッドランプの光がいらなくなってきたので撤収して出発。はじめはなぜか脚運びがおぼつかなくて躓いたりした。
テント場から10分強で鹿納山だ。岩峰の基部に荷物を置いてピークを往復。五葉岳までは以前歩いたことがあるので、気楽だった。五葉岳からは傾山が大きく見える。夏木山、新百姓山、杉ヶ越、傾山、九折越・・・。祖母山へと連なるコースに思いをはせた。夏木山までは見事なブナの木立が続く。足元を埋め尽くす枯葉がカサカサと軽い音を立てる。一様な形に丸まっていて、マカロニのように見えた。一枚一枚の中に無数の細胞があり、その中にさらに数多くの葉緑体があり、光合成で二酸化炭素を吸収して炭素を固定、酸素を放出し・・・。考え始めるときりがない。水さえ持ち上げれば、絶好のテント場になりそうな場所がそこら中にあった。
五葉岳から傾山
出発から約3時間で夏木山に到着。ここから下山に移るが、祖母山方面への縦走なら、16時くらいに九折越といったところか。ペースダウンを考慮に入れると日没ぎりぎりかもしれない。
20分ほど休み、引き返して瀬戸口谷への下降点を探すが、道標やテープは見当たらなかった。夏木山と1402㍍ピークの中間くらいまで戻ったところで、歩きやすそうな疎林に踏み込んで谷へ下った。10分くらいで瀬戸口谷。谷筋を下り始めてもほとんど踏み跡などはなく、ゴーロ歩きが続く。しばらく降りたところで夏木山への分岐を示す道標があったが、テープのついたところは薮化しており、先ほど下ってきたところより明らかに通りにくそうだった。黒岩滝のあたりから水流が出てきた。岩は滑りやすく要注意。深さ5センチほどの流れに山女が泳いでいる。手づかみに挑戦したが、触るまでしかできなかった。練習が必要だ。気持ちよく歩いていたら吐野まで数百㍍のところで転倒し、膝を強か打った。しばらく脚に力が入らないほど痛かった。何とか立ち上がり、吐野で最後の休憩。登山口まで暑さと膝の痛さをこらえて下った。木々の間から時折祝子川ゴルジュが見える。これも目標の一つだ。
瀬戸口谷1
7瀬戸口谷2
降りてみれば、2日とも行動時間は約7時間。本気でもなく、お気楽でもない程よい長さ。岩場あり、美林あり、渓谷ありと内容も充実。下山後すぐに美人の湯でさっぱりできるし、かなりおすすめのコースと言えるだろう。